Facebookによる外国人底辺労働者の組織化
2013年4月1日~2015年3月31日
本研究は、外出機会が制限され、構造的にもっとも孤立しやすいとされる住み込み外国人家事労働者 が、シンガポールという政治的な自由が制約されている就労国で、Facebookを利用して自分たちを組織化し、親密圏を構築し、社会運動を展開して成功 を押さめている事例を、Facebookの書き込みをデータ化し分析することで検討することが目的である。
本研究が対象としているのはフィリピン人家事労働者からなるHOME GABRIELA とイン ドネシア人家事労働者が働くHOME KARATIである。研究目的として次の3つを設定し た。ひとつは、デジタルなソーシャルネットワーク媒体であるFacebookが、その手軽さと楽しさゆえに、社会運動参加のコストを下げるかたちで、就労地で周辺化され ている外国人労働者のサイバーアクティビズムにつながることを明らかにする。二つ目の目的は、外国人による住み込み家事労働の問題点としてこれまで指摘されてきた労働場所や労働実態の見えにくさといった特徴が、Facebookの労働運動においては利点となりうることを明らかにする。最後に、Facebookの「書き込み」が研究のデータソースとして活用しうることを示す。
本研究が対象とするFacebookの開設時にさかのぼって、書き込みデータを収集し、エ クセルに落としデータセットを作成した。さらに、Facebookの社会運動の具体的な 成果として、フィリピン法に違反しているフィリピン斡旋業者に対して、家事労働者が払いすぎた費用の返還運動がはじまり、その件について家事労働者と元家事労働者への個別のインタビューをシンガポールとフィリピンで行い、さらにフィリピンでのその返還運動の拠点となるNGOで調査を行った。
- Ueno, Kayoko and Danièle Bélanger, 2019.03,
“Facebook Activism among Foreign Domestic Workers in Singapore”『東京女子大学社会学年報』7: 39-56【学術論文】 - Ueno, Kayoko, 2016.05.20,
“Facebook Activism and Networking among Foreign Domestic Workers in Singapore”, Migrant Technologies: (re)producing (un)freedoms, United Nations University, Macau.【Conference Presentation】 - Ueno, Kayoko, 2015.03.01,
From a Closet in the Employer’s House: Facebook Activism among Foreign Domestic Workers”, International Workshop on “Intimate Lives of Labores”, Graduate School of Asia-Pacific Studies, Waseda University.【Conference Presentation】 - Ueno, Kayoko, 2014.07.15,
“Facebook Activism by Foreign Domestic Workers in Singapore”, XVIII ISA World Congress of Sociology, Yokohama, Japan.【Conference Presentation】でのコメンテーター - 上野加代子, 2013.04,
「NGOのサイバー・アクティビズム」『 M-ネット Migrants Network』160: 16-17.【エッセイ】 - Ueno, Kayoko, 2012.11.26-29,
“Analysis on Facebook Movement Among Foreign Domestic Workers”, World Social Forum on Migration, Philippine Quezon City: Miriam College.【Conference Presentation】
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